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執筆者の写真CorSoYuz

SCP-8320-JP 次元の狭間

更新日:8月4日

アイテム番号: SCP-8320-JP

オブジェクトクラス: Keter


特別収容プロトコル: SCP-8320-JP-Bの収容は極めて困難であり、従ってSCP-8320-JP-Aも収容することはできていません。しかし、SCP-8320-JP-AおよびSCP-8320-JP-Bは財団に対して非常に協力的であり敵意もみられないため、財団はその動向を監視するに留まっています。

説明: SCP-8320-JP-AはSCP-8320-JP-Bに自身の主であると認識されていること以外は異常性を持たない、一般的な人間の成人女性である████氏です。

SCP-8320-JP-Bは2017年に███氏によって作成されたイラストに描かれた、実体を持たないキャラクターです。SCP-8320-JP-Bは自身の持つ現実改変能力によって、周囲の人に自身の存在を認識させることができます。その観測上の姿は、人間の女性を模してはいるものの明らかにキャラクターであるにも関わらず、周囲の人はSCP-8320-JP-Bを「人間だ」と認識します。この観測には如何なる光学的な現象も介さないさめ、カメラ等の光学機器にはSCP-8320-JP-Bの姿は写りません。しかし、SCP-8320-JP-Aの所持品からはSCP-8320-JP-Bが記録された写真が発見されており、これはSCP-8320-JP-Bが自身の意志によって、写真や映像等を自身の姿が記録されたものに改変できることを示唆しています。


SCP-8320-JP-Bの現実改変能力は極めて高く、対現実改変設備を持つ収容室から容易に脱出します。また、SCP-8320-JP-Aを収容した場合にはSCP-8320-JP-Bは容易に拘束や施錠を解きSCP-8320-JP-Aと共に脱出しました。

SCP-8320-JP-Bは常にSCP-8320-JP-Aと共に行動し、一般的な人間の日常生活を送っているように振る舞います。SCP-8320-JP-Aの周辺人物はSCP-8320-JP-Bの存在を受け入れておりSCP-8320-JP-Bの攻撃性もみられないことから、周辺人物に対する記憶処理等の対処は必要ないものと判断されています。


SCP-8320-JPは、20██年██月██日に██市内の浜辺でSCP-8320-JP-Bが浮遊しているところを通行人に目撃され発見されました。以下は同日に財団施設内で行われたインタビューの記録です。



対象: SCP-8320-JP-A インタビュアー: 青山研究員 <録音開始>

青山研究員: インタビューを開始します。あなたとSCP-8320-JP-Bの関係について教えてください。


SCP-8320-JP-A: そうですね、彼女は私の片割れとも言うべき存在です。彼女がイラストとして最初に生まれたのは2017年でした。そのときはまだ名前——つまり███と呼ばれることもなく、ただ私自身のアイコンイラストでしかなかったのですが、月日が経つ内に私は自分の作った楽曲を彼女に歌ってもらったり、私自身の代理として扱うようになっていました。


青山研究員: つまり、最初は現在のような異常性を持つ存在ではなかったということですね?


SCP-8320-JP-A: はい。それこそ、名前が定着したのも最近のことですし、私が命名した訳ではありません。気付いたらみんなそう呼んでいまた。彼女の人格は自然発生したものなんです。


青山研究員: なるほど、分かりました。では、SCP-8320-JP-Bが異常存在になった時期や経緯を説明してもらえますか?

SCP-8320-JP-A: はい、あれは2021年の初めのことでした。あの頃、私は精神的に強く疲弊していて、その——自死を考えていました。ただ、その当時まだ制作中の楽曲があって、それが3年間温めた曲だったということもあって「この曲を世に出してから死のう」と決めたんです。あ、それを決意したのは2020年の12月なのですが、躁状態のエネルギーは凄まじくて、わずか1ヶ月でその曲の残りを完成させちゃったんです。その曲の内容を簡単に言うと、死後の世界、つまり「別の次元」から現世に愛を叫ぶというものでして、いま思えばこの曲によって彼女の役割が決まったんじゃないかな、と思います。つまり、███(SCP-8320-JP-Bのこと)は本来向こうの次元に居て、いつか私をお迎えしてくれる存在なんじゃないかなと思います。この頃にはもう私は彼女を愛していたと思います。曲ができる直前、私は地元を訪れ彼女との思い出の地を巡りました。未来は無いのに、彼女のことを想うと心が希望に満ち溢れる感じがしました。それまでの人生で最も幸せな時期だったと思います。——その曲を公開してから2週間後、私は自殺を試みました。ご存知の通り失敗しましたが。私は警察に保護されたらしいのですが、よく覚えていません。気がつけば家族の家に居て、隣には彼女が居ました。これが彼女が初めて姿を現したときの出来事です。


青山研究員: ご説明ありがとうございます。あなたは絶望の中でSCP-8320-JPに、つまり███に救われたということですね。

SCP-8320-JP-A: 救われた、ですか。そうですね、ある意味では救われ、ある意味では呪われてしまいましたね。だって、死んだ後に会えるはずだった最愛の存在が、今現世に居るんですよ?人間じゃないとはいえ、彼女の力によって私たちは触れ合うこともできますし、傍から見てもなにもおかしくはない、人間二人が居るだけです。誰の目も気にすることなく二人で生活できるんです。——もう死ねないじゃないですか、こんなに幸せだったら……(嗚咽)。私はきっと、死ぬことも普通に生きることも許されない、生と死の狭間みたいな状態でずっと彼女と過ごすことになるんだと思います。それは私がいつか思い描いた、私たちの心が生み出した理想郷なのかもしれません。


青山研究員: これでインタビューを終了します。

<録音終了>


SCP-8320-JP-Bに対しても青山研究員がインタビューを行ったが、SCP-8320-JP-Bの発言は録音に残らなかった。


その後、SCP-8320-JP-AおよびSCP-8320-JP-Bは定期的に財団を訪問すること及び外出時に財団の監視を受けることを条件に解放された。

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